13.vs音
どうだ、と笑って振り返ったテマリが、神話に出てくる破壊の女神のようだった。と同時に、親しい自分の母親のようだった。そして、そのどちらにも似ていなかった。
「せっかく木の葉に来たんだから、買い物くらい連れていけ」
笑みもせず、上から見下ろすように物を言う。腹は立ったが、媚びるようなやつよりずっとマシだとシカマルは思った。
表通りに案内すれば、テマリはさっさと背筋を伸ばして足早に先を行く。のんびり歩いていたら置いていかれそうで、シカマルは歩調を速くした。不安だからではない。なんだかムカツクからだ。
テマリは花屋の前で立ち止まった。小さな鉢植えを指差して店主と話をしている。あーそういや趣味が植物観賞だったっけ?うちの(とーちゃんの)盆栽見せたら、あんな楽しそうな顔すんのかね。腕組みをしながらそんな事を考えたら、喜んだ顔が見たくなった。めんどくせぇ、と思うと同時に、ポケットの硬貨に手がのびた。
「じゃあコレを」
「はいよ」
握った手のひらを開くどころかシカマルが声を上げる間もなく、テマリは植木鉢の支払いをすませた。
「………」
喫茶店に入ってからも、シカマルは喋る気にならなかった。自分より3テンポ行動が早いテマリ。なんだかバツが悪かった。慣れない紅茶の匂いが一層そう感じさせる。
テマリはダージリンをすすったり、さっき買った植木鉢を眺めたりしていたが、ふとシカマルに顔を向けて楽しそうに笑った。
「おまえ、ほんと私の事が好きだな」
「あぁ?」
めんくらって、声が上ずった。驚きが急速に何て自信過剰なという呆れに変わる途中、またテマリが口をひらく。
「さっきこれ買ってくれようとしただろ?」
「…気付いてんなら、男に花もたせろよ」
「ああ、やっぱりそうか。いや、ここに入ってから気付いたから」
すまない、と言う声が笑って震えている。
「…趣味悪ィな…」
「まあまあ、で、いつからだ?」
「うっせー、てかてめー音忍と戦った時森ブッ飛ばしたくせに植物観賞だとか矛盾してんじゃねーのかよ」
そうだ。恋に落ちたとしたらあの時。対音の里の戦い。どうだ、と笑って振り返ったテマリ。女神でも母親でもない、素敵な他人だ。
なんて笑い話。
「おまえなぁ」
まだ笑い続けるテマリを、シカマルは呆れた目で眺める。自信過剰だ。どうか頬が赤くなんてなってませんように!
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