14.ピアス

 

真夏日の翌日は雨が降った。退屈そうに窓の外を眺めていたテマリが、ふと悪戯の前触れのように口の端を釣り上げてこちらを見た。
「いつからそれつけているんだ? お前」
「は?」
「ピアス」
シカマルは頭の隅で面倒事を予測して顰め面をした。近くによってきたテマリの眼がさっきより傍にある。不思議に深い色をした瞳は面白そうに光るからまだましだと思う。
「あー…アカデミー入ってからだな」
「そうか」
綺麗な指先――その指であの巨大扇子を操っているのだが――が、ついと顔の横に伸びてくる。やめろ、と制止の声をかけるという選択肢が浮かびすらしないうちに、右耳のピアスはテマリの掌の上に移動した。窓から差し込む鈍い光を金色に反射する輪を指でなぞる。そこにいってしまったならもう取り戻そうという気は、シカマルには起こらなかった。右耳が淋しい。耳に手をやって軽く耳朶に触れると、その動作を見ていたのか、テマリが自分の掌から顔をあげた。
「木の葉には耳に穴をあける習慣があるのか?」
「は? いや、ねぇんじゃねーか…?」
「確かおまえの中忍試験のときの班のメンバーは全員ピアスをしていたと思うんだが」
「おまえの弟だってピアスあけてんだろ」
たわいのない会話の最後に、そうか、とテマリが笑う。きらりと一度反射をのこして、ピアスが彼女の手の中に隠れる。握った拳で床に手をつく様子は猫のようだと思った。猫の背伸びのように体をそらせて、近付く顔は頬の横に。面倒事か、それも含めた悪戯なのか。
「どんなふうに感じるんだろうな」
「何がだよ」
「ピアスホール」
「…どんな、って……なんだよ」
金属の重みを欠いて物足りなかった耳朶にテマリの指が触れる。何も悟られないように、シカマルはまた眉間にきゅっと力を入れる。
とりわけ今の気持ちは悟られてはならない。
悟られたら最後、今後一生勝てそうになくなる。
それなのに、シカマルの目の前で、テマリは静かに睫を伏せる。雨雲を通して少しづつ零れる淡い陽の光に薄い陰影が頬に翳る。笑みの形をつくる薄く開いた唇が思ったより綺麗な色で濡れていて。
一瞬の柔らかい感触。ピアスホールに、通り抜けるとろりと熱い唾液の感触。それを受け取ってシカマルは今、彼女に手をまわしてキスをしたいと思う。













何かもう色々すみません…。何分ティーンエイジャーを書き慣れてないもので…。




 

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