7.7cm



 まだ時季が早すぎてどこか不似合いな、縁側の軒先に吊された朝顔柄の風鈴は、やはりちりんとも鳴らずとまったままでいる。
 シカマルは板張の床の上、目を閉じているのも苦しいくらいのむっとする気温の中に黙って寝転んでいた。シャツの中ではじっとりと張りつくような汗が滲んでいるのがわかる。気が向けば、目を開けて庭先とその向うの通りの垣根がわりに紫陽花が綺麗に咲いているのを見ることができた。
 腕を水平に伸ばして、握った拳をひらけば、指先がその淡い色の花に届きそうだとシカマルは思う。
 実際にそれで手が届くのは隣に投げ置かれた団扇くらいだと実際にやってみて知る。届きそうで届かないもどかしい距離がある事は知っていた。せいぜい身長差や能力差ぐらいだと、たかを括ってはいたが。
 せめてこのくらい近ければ。
「………らしくねーっつーか、むしろらしいっつーか…」
 面倒臭いのとは何か違うように思えたが、不精な性格は自覚していたからそういう事で片付けてしまう。
 けれど巧く離れない。
 握った拳を開いて届く距離ならいい。簡単に触れられる。なのに身体はここにないのだ。心に至ってはここにくる可能性すら定かではないまったく未知のもの。
 知っているテマリの表情を思い返そうとする。思い返そうとしてやめる。きつく睨んでくる挑発の色と、怯えた眼しか思い出せないからだ。そのたびに、近くにいてもきっとそれだけだろうと諦めた気分になるからだ。
 逡巡をやめてのろのろと目をあければかわらず霞み出しそうな空気の向うに綺麗に咲いている紫陽花。涼やかに見える花と額の汗が巧く噛み合わなくてシカマルは眉を寄せる。これより綺麗に咲く場所を知っていた。雨の降らない国にはきっとない光景だと思っても傍にいないなら叶わない。
 これ以上になどなれない。
 傍にいてもきっと。その7cm程度の距離を越えられない。
「めんどくせーしなァ」
 責任転嫁をしながら団扇に手をのばす。柄をしっかりにぎって少しだけ涼しくなる風を作った。
 その小さな大きい距離をこえたらもっと楽しいという事は経験もないのに疾うに知っていた。
















7cmっていったらシカテマの身長差でシカマルの方が低いトコが萌ポインツではあるのですが、たぶん同ネタ多数になると思うのであえて外して二人の距離ってことにしてみました。「7cmの距離」って曲が元ネタです。





 

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